金木犀が、香る。
そんな季節になったとたん、
なぜだかそわそわと、心が騒ぐ。
なぜだろう、
心もとなくて寂しくて、涙もろくなる。
寒くなったせいかな、あ、そういえば。
過去をたどる。
そこには彼がいた。
今はもういない彼がいた。
そうか、この香りは、あの人を運んできてくれる。
電話をとって廊下で泣き崩れた私を、まざまざと見せつけて。
あの校舎の、あの部屋の、あの距離の、あの声とあの言葉と、あの眼差しを、
つれてくる。涙を誘う。
ねぇ、まだ、泣けるんだ。
こんなにも新鮮に流れるんだ。
会いたいなあ。
この香りは、絶対に毎年、とぎれることはないから、
だから毎年、毎年、これから先ずっと毎年、この香りで思い出す。
悔しいな。
今のあたしを、見てほしいのに。
ねぇ、わかってるなら教えてね。
私はいつまで、生きられる?
いつになったらそっちへ行ける?
障害者は、
日常生活を送るだけで、
必死で頑張って生きてるなって、思ってもらえる。
お年寄りは、
生きてる、ただそれだけで、
経験豊富で尊敬すべき存在と認識される。
じゃあ私は?
若いから、元気で、
悩み事は、ただの恋煩いで、
そんなふうにしか、思われてないでしょう?
病名のない病をかかえて、
人知れず涙流して、
自分守るために必死に笑って、
そんな私を、あの時助けてくれたのはあなたです。
ひねくれて、あけたピアスの穴、
見て怒ってくれたのはあなただけです。
いなくなったあたしを、
ずっと探して、そして見つけてくれたのもあなたです。
何時間も、話をして、
最後に笑ってくれたのは、あなたでした。
ありがとう。
いつかまた、しっかりお礼を伝えに行くから、待っててね。
寒くなってきたから、あたたかくしていてね。
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