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バイトおわり
このあいだの待ち合わせ場所
コンビニで水を買う。
外へ出て一息つきメール。
「ついた。」
見覚えのある車がゆっくり近づく。
そっとドアを開けまた一息
覚悟を決めて乗り込み、一言。
「どこ連れてってくれんの?」
最悪の事態もありえた。
私にとって最悪の事態はホテル直行パターン。
殺されるなら、それは私にとって最悪の事態ではなかった。
殺されるなら、
それは案外私にとって最適の事態だった。
車がゆっくりと発進する。
運転はさすがにうまかった。
シートベルトをしめる。
友人に、最後かもしれないメールを送った。
話を始める。
とめどなく続く自分の話。
耐えられないと思う反面
どこか望んでいたことのような気もした。
わかるの。といった。
わかってたか。彼は言った。
知らない道を走る車。
いくつも、怪しいネオンのうっとおしいホテルを過ぎる。
見えるたびに体に力がこもる。
怖くて、でも諦めも混じる。
カッターを忘れたことを思い出す。
数時間走って、たどりついた公園。
車を降りて、海の匂いのするほうへ。
暗い道。離れて歩く。
海岸の舗装された道。
すべるのに気を取られつつ、彼の10歩ほど前を歩く。
ときどきふりむく。
顔は見えない。
足元を良く見れば、得体のしれない生き物が
一歩踏み出すたびに
放射線状にうごめく。
行き止まりまで歩き、
引き返す。
並んで歩く。
右側に彼が見える。
右手にかばんを持ち直す。
それまでもずっと
街灯の陰で彼の位置をはかる。
そんなことしながら、
この方法自分はどこで知ったのか苦笑する。
そのままさっきの道、
車につく少し前、肩に触れられる。
笑ったけど、ドキッとした。
ときめきじゃないほうで。
車に戻って、シートベルトを締めて一言。
「きれかったね、帰りましょうか。ありがとう。」
車が動き出し、ナビをちらちら見ながら
とりあえず話をする。
帰りはにぎやかな街道を走る。
安心は一瞬。
ボディタッチが増える。
髪、頭、肩、腕…
ときめかない。
そのことに驚く。
触れられて、嬉しくも不快でもない。
それは初めての感覚だった。
途中彼の仕事場へ、猫を見せてくれた。
猫を探しに行った隙に、
車のナンバーと会社名を覚える。
空を見上げて、
猫を見降ろして、
心の中でつぶやく。「なにしてんだろ私。」
また車に乗って
結局何もなく送ってくれた。
危ないと言う彼に断り、元の場所で車を降りる。
なんだったんだろう。
今日告白された。
だけどそれでもときめかなかった。
なんだったんだろう。
なにしてんだろう。
誰かの愛情が欲しい。
そう思ってた。
誰かが愛情をくれた。
望んでいたはずなのに、違った。
きっと誰でもいいんでしょう?
いいやお前だけだ。
きっとすぐに独りにするんでしょう?
いいやずっとそばにいる。
そんな関係望んでるのかな。
よくわからないな。
難しすぎる。
私はきっと、
少し、殺されたかったのかもしれない。
自分で死ねない分、他力本願。
最後まで偽物の、悲劇のヒロインやりたかっただけ
情けない。
きっとそのうちまたひとり。
自分の意地とつまらないプライドのために動く人間なんて
そうはいないんだ。
そんなのわかってる。
わかってる。わかるんだ全部。
わかるから、苦しい。
わかって、できないのが、また苦しみを生む。
もぅいい。誰か殺して。
あたしを殺してくれる優しい人はいないの?